【非営利型法人】共益型要件を徹底解説!!

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一般社団法人や一般財団法人など営利を目的としない法人は、一定の要件を満たせば、収益事業から生じた所得のみに対して課税されます。このような法人のことを税務上は、非営利型法人と呼んでいます。

今回は、この非営利型法人の要件のうち、共益型要件を詳細に解説します。

以下の記事では非営利型法人の総論として全体像を解説しています。こちらもあわせてご覧ください。
【非営利型法人】要件確認 | 収益事業なければ課税なし!?

共益型要件

共益型法人の要件は全部で7つあります。

  1. 会員に共通する利益を図る活動を行うことを目的としていること
  2. 定款等に会費の定めがあること
  3. 主たる事業として収益事業を行っていないこと
  4. 定款に特定の個人または団体に剰余金の分配を行うことを定めていないこと
  5. 解散したときにその残余財産を特定の個人または団体に帰属させることを定款に定めていないこと
  6. 上記1から5まで、および下記7の要件に該当していた期間において、特定の個人または団体に特別の利益を与えることを決定し、または与えたことがないこと
  7. 各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること

以降でさらに詳しく見ていきます。

会員に共通する利益を図る活動を行うことを目的としていること

一般社団法人・一般財団法人の定款には、絶対的記載事項として法人の目的を記載する必要があります。この要件を満たすためには、定款の目的が、共益的な活動を行うことが主たる目的である必要があります。

定款等に会費の定めがあること

共益的な活動を行う上で、会費を恣意的に定めるのではなく、定款等において定めておくことを求めています。さらに会費の金額は、社員総会や評議員会の決議により定めることが必要です。

実務上は、定款においては別途規程に定めると規定しておき、会員規程などで具体的な会費等を定めておくのが一般的かと思われます。

主たる事業として収益事業を行っていないこと

法人税法基本通達1-1-10では、主たる事業は以下のとおり判定すると記載されています。

要約すると、収入金額や費用の金額などの合理的と認められる指標に基づき、その合理的と認められる指標の割合をもって、収益事業以外の事業の割合が50%超であれば、主たる事業として収益事業を行っていないものとして要件を満たすとされています。

(主たる事業の判定)
1-1-10 令第3条第2項第3号《非営利型法人の範囲》に規定する「主たる事業として収益事業を行つていない」場合に該当するかどうかは、原則として、その法人が主たる事業として収益事業を行うことが常態となっていないかどうかにより判定する。この場合において、主たる事業であるかどうかは、法人の事業の態様に応じて、例えば収入金額や費用の金額等の合理的と認められる指標(以下1-1-10において「合理的指標」という。)を総合的に勘案し、当該合理的指標による収益事業以外の事業の割合がおおむね50%を超えるかどうかにより判定することとなる。
 ただし、その法人の行う事業の内容に変更があるなど、収益事業の割合と収益事業以外の事業の割合の比に大きな変動を生ずる場合を除き、当該事業年度の前事業年度における合理的指標による収益事業以外の事業の割合がおおむね50%を超えるときには、その法人は、当該事業年度の開始の日において「主たる事業として収益事業を行つていない」場合に該当しているものと判定して差し支えない。(平20年課法2-5「二」により追加)

(注) 本文後段の判定を行った結果、収益事業以外の事業の割合がおおむね50%を超えないとしても、そのことのみをもって「主たる事業として収益事業を行つていない」場合に該当しないことにはならないことに留意する。

法人税法基本通達1-1-10

定款に特定の個人または団体に剰余金の分配を行うことを定めていないこと

剰余金の分配を行うことを定款に定めなければ、この要件は満たせます。

そもそも一般財団法人や一般財団法人は、法律上、社員や設立者に対する剰余金の分配が禁止されています。ただし社員や設立者以外の者には、剰余金の分配は法律上禁止されていないため、ここの要件は、社員や設立者以外の者に剰余金の分配をすることを排除する規定となっています。

なお非営利徹底型の要件では、剰余金の分配をすること自体を定款に定めさせて排除しています。一方、共益型の要件では、定款に定めて排除させることまでを求めていないことから、両者の比較でいうと非営利徹底型の方が、非営利性についてより厳しい要件であることがわかります。

解散したときにその残余財産を特定の個人または団体に帰属させることを定款に定めていないこと

こちらも上記の剰余金の分配の要件と趣旨は同様です。定款に「残余財産を特定の個人または団体に帰属させる」ようなことを書かなければ、要件は満たせます。

上記および下記の要件に該当していた期間において、特定の個人または団体に剰余金の分配等により特別の利益を与えることを決定し、または与えたことがないこと

非営利徹底型の要件と異なるのは、、残余財産の分配が除かれている点にあります(非営利徹底型の要件はこちらを参考)。

つまり共益型の要件では、残余財産の分配については制限がかかっていないことから、残余財産を社員等に分配したとしてもここの要件に抵触しないと考えられます。

共益型の法人の活動の原資は、社員等を含む会員の会費から成り立っていることを鑑みれば、残余財産を還元すること自体はやむを得ないと考えているのではと思われます。

また特別の利益を与える行為とは、法人税法基本通達1-1-8に以下のとおり定められています。

(非営利型法人における特別の利益の意義)
1-1-8 令第3条第1項第3号及び第2項第6号《非営利型法人の範囲》に規定する「特別の利益を与えること」とは、例えば、次に掲げるような経済的利益の供与又は金銭その他の資産の交付で、社会通念上不相当なものをいう。(平20年課法2-5「ニ」により追加)

(1) 法人が、特定の個人又は団体に対し、その所有する土地、建物その他の資産を無償又は通常よりも低い賃貸料で貸し付けていること。(2) 法人が、特定の個人又は団体に対し、無利息又は通常よりも低い利率で金銭を貸し付けていること。
(3) 法人が、特定の個人又は団体に対し、その所有する資産を無償又は通常よりも低い対価で譲渡していること。
(4) 法人が、特定の個人又は団体から通常よりも高い賃借料により土地、建物その他の資産を賃借していること又は通常よりも高い利率により金銭を借り受けていること。
(5) 法人が、特定の個人又は団体の所有する資産を通常よりも高い対価で譲り受けていること又は法人の事業の用に供すると認められない資産を取得していること。
(6) 法人が、特定の個人に対し、過大な給与等を支給していること。
なお、「特別の利益を与えること」には、収益事業に限らず、収益事業以外の事業において行われる経済的利益の供与又は金銭その他の資産の交付が含まれることに留意する。

法人税法基本通達1-1-8

要約すると、利害関係のない純然たる第三者との間で成立するであろう取引価格(いわゆる公正な時価)よりも、不相当に高かったり安かったりした場合には、取引の相手方に何らかの経済的利益を享受させることになります。そのような取引を認めてしまうと、法人の内部留保を他社に還元させてしまうことにつながり、「剰余金の分配の禁止」や「残余財産の帰属先の指定」の要件が形骸化してしまう恐れがあるため、このような要件を定めていると考えられます。

こちらの要件は実態で判断をせざるを得ず、判断に迷う場面も多いと思いますので注意が必要です。

各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること

非営利型法人の要件として、事業を行うための組織が適正であることを求めています。組織が適正であることの具体的な要件としては、理事の総数に占める特殊関係者の割合を制限しています。理事と特殊の関係のある者とは次の者をいいます(法人税法施行規則2条の2①)

  1. 理事の配偶者
  2. 理事と三親等以内の親族
  3. 理事と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
  4. 理事の使用人
  5. 1から4までに掲げる者以外の者で当該理事から受ける金銭その他の資産によつて生計を維持しているもの
  6. 3から5までに掲げる者と生計を一にするこれらの者の配偶者又は三親等以内の親族

本人からみた三親等内の親族とは図のとおりです。

この要件は、親族等による法人の私物化を封じるためのものです。この要件を満たすためには少なくとも理事が3人以上いる必要があります。したがって、理事1人のみの一般社団法人はこの要件を満たすことはできません。

また理事の退任に基因して、万が一この3分の1要件に該当しなくなった場合であっても、その該当しなくなったときから相当の期間内に理事の変更を行う等により、再度3分の1要件を充足できると認められるときには、継続して要件を充足しているものと取り扱ってよいとされています(法人税法基本通達1-1-12)。

おわりに

今回は、収益事業のみ課税の対象となる非営利型法人のうちの1つの類型である共益型要件について解説しました。形式的に判断できるところがある一方で、実態で判断しないといけない要件もあるため注意が必要です。