【実務者必見】収益事業課税とは!?公益法人税務の基本知識

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公益法人は収益事業にのみ課税されるということを知っている人は多いと思いますが、実際にどんな事業が収益事業になるのか、そもそも収益事業課税とは何かを知っている人は案外少ないのではないでしょうか。

今回は公益法人税務の基本知識として、この収益事業課税を取り上げたいと思います。

収益事業課税とはそもそも何か

株式会社などの普通法人は、営利を目的とする団体のため、すべての所得に対して法人税が課税されます。一方で、公益法人などの非営利法人は、営利を目的としない団体のため、法人税法で定められた収益事業から生じた所得に対してのみ法人税が課税されます。これを収益事業課税といいます。

ここでいう営利とは、本書のテーマである収益事業を行うかどうかではなく、利益を分配するかどうかで判断されます。この営利、非営利のテーマは別の記事で解説をしてますのでご確認ください。

公益法人などの非営利法人は、寄付金・補助金・会費などを原資として公益活動を行う法人であり、収支に余剰が生じ、そこに課税が行われると活動原資が損なわれ、公益活動を阻害する恐れがあるため、このような収入は非課税扱いとなります。一方、公益法人等が、商品やサービスを提供し対価を収受して行うような事業にまで非課税扱いとすると、似たような事業を行う普通法人と比較すると、納税負担に不均衡が生じます。そのため、法人税法で定められた収益事業を行う場合には、普通法人との対等な立場で競争を行わせるよう税務面の平仄をあわせるべく課税の対象としているわけです。これはイコールフッティングの考え方に基づいています。

収益事業課税の対象となる法人

収益事業課税の対象となる法人は、法人税法2条1項6号で定める公益法人税等であり、具体的には法人税法別表2に掲げる法人とされています。代表例は下記の通りです。

No.法人格
1公益社団法人・公益財団法人
2社会福祉法人
3学校法人
4宗教法人
5NPO法人
6非営利型の一般社団法人・一般財団法人等

収益事業課税の対象となる収益事業(全34業種)

根拠条文

収益事業課税の対象となる収益事業は、法人税法2条1項13号に以下の通り定義されています。

法人税第2条(定義)
十三 収益事業 販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいう。

この定義を分解すれば以下の通りです。

  1. 販売業、製造業その他の政令で定める事業
  2. 継続して行われるもの
  3. 事業場を設けて行われるもの

これらの3要件を満たせば、収益事業として課税されるということになります。
以降で、この3要件についてもう少し細かくみていきます。

①販売業、製造業その他の政令で定める事業

販売業、製造業その他の政令で定める事業は、法人税法施行令5条に以下の通り記載されています。

1物品販売業13写真業25美容業
2不動産販売業14席貸業26興行業
3金銭貸付業15旅館業27遊技所業
4物品貸付業16飲食業28遊覧所業
5不動産貸付業17斡旋業29医療保険業
6製造業18代理業30技芸教授業
7通信業19仲立業31駐車場業
8運送業20問屋業32信用保証業
9倉庫業21鉱業33無体財産権提供業
10請負業22土石採取業34労働者派遣業
11印刷業23浴場業
12出版業24理容業

上記の表で列挙された事業が収益事業となりうる事業ですが、字面だけだとイメージがしづらいですよね。そこで事業ごとのイメージをもっていただきたく、具体的な内容については、事業ごとに解説をおこなっておりますので、事業名称クリックしていただき、それぞれの詳細ページでご確認ください(順次更新予定)。

②継続して行われるもの

継続して行われるものについて、法律上、具体的な定めはありません。実務上は、下記の要素を考慮して、継続性の有無の判断を行います。

  1. 期間と反復性
    事業の実施期間がどの程度か、また反復して行われているかどうかを、事業の種類や形態、内容等に応じて判断します。なお事業の準備期間も期間に含み、不定期に反復して行われるものも含まれます。
  2. 施設の存在
    事業を実施する上で、施設が存在している場合には、継続して行われているものと推測されます。
  3. 事業の規模感
    事業規模を示すものとして、収入規模が大きい場合には、例え一過性の事業であったとしても、準備期間を考慮して潜在的な事業期間があったものと判断されます。
  4. 契約書や料金表などの存在
    契約書や料金表が存在している場合には、一過性の事業であっても継続して行われているものと推測されます。

③事業場を設けて行われるもの

こちらも法令上、明確な定めはありませんが、通常は物理的な施設として、店舗・事務所・活動拠点などの場所が設けられていれば、事業場と考えられます。移動販売や移動演劇興行などのように、特定の固定施設がなくても、その都度事業活動を実施できる環境にあれば、事業場があるものと判断されます。

実務上の留意点

収益事業を始めて実施する場合

申告書の提出のほか、税務署等への下記の書類の提出が必要になります

  1. 収益事業開始等届出書
    提出期限:収益事業を開始した日、該当することとなった日又は有することとなった日以後2月以内
    国税庁HP(参考):C1-6 公益法人等又は人格のない社団等の収益事業開始等の届出
  2. 青色申告承認申請書
    提出期限:収益事業を開始した日から3ヶ月が経過した日とその事業年度終了の日のいずれか早い日の前日まで
    国税庁HP(参考):C1-19 青色申告書の承認の申請

公益目的事業との関連性

公益社団法人や公益財団法人は、収益事業に対して課税されるのが原則ですが、その事業が公益目的事業に該当する場合には、法人税法施行令5条2項1号より課税されないことになっています。

公益目的事業とは、自分達の事業が不特定多数の人たちの利益の増進に寄与するものとして、公益認定を申請し、公益目的事業として認められたものをいいます。

したがって、たとえ実施事業が収益事業に該当したとしても、それが公益目的事業として実施している事業であれば、課税はされないということになります。

消費税との関連性

法人税は収益事業なければ課税なしですが、消費税はそのような取り扱いはありません。そのため、法人の取引が、消費税法上の課税取引であれば、その取引が収益事業に該当するかどうかに関係なく、消費税が課税されることとなります。

おわりに

収益事業課税に関しては、法令に規定する34業種に該当すればただちに課税されるのではなく、厳密には、事業の継続反復性や事業場の有無などを考慮して判断する必要があります。

いずれにせよ、そもそも収益事業に該当するかどうかも含め、判断に悩むケースは少なくありません。あたらしく事業を実施する前に、収益事業として課税されるかどうか、ぜひ一度税理士や税務署に確認されることをおすすめいたします。