【理事会】招集手続きと決議方法 | 迅速な意思決定で効率的な運営を!!
理事会は法人の業務執行の意思決定を行う重要な機関です。理事会設置型の社団法人や財団法人にとっては、理事会でのスムーズな意思決定により迅速な法人運営が可能になります。また議題の重要性次第では決議の省略による方法も駆使することで、タイムリーな意思決定が可能になります。
今回は理事会の招集手続きから決議方法を解説します。
目次
理事会の開催頻度
一般法人法(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律)には、理事会の開催頻度について規定はされていませんが、代表理事や業務執行理事は、3ヵ月に1回以上の頻度で、自己の職務執行状況を理事会に報告する義務があります(一般法人法91条2項)。なお定款に定めた場合には、事業年度中に4ヵ月を超える間隔で2回以上報告すればよいとすることも可能です(同法2項)。
理事会を開催するための招集手続き
理事会の招集権者
理事会は、原則として各理事が招集することができますが、定款等によって理事会を招集する理事を定めたときは、その理事が招集します(一般法人法93条1項)。一般的には、定款に定める方法により代表理事が招集権者になっていることが多いと思われます。また定款で定めていなくても、理事会決議によってその都度招集権者を定めることもできます。
なお、あらかじめ招集権者を定めている場合であっても、一定の場合には、他の理事が招集権者として理事会を招集することも可能になります。一定の場合とは、以下のとおりです。
(招集権者)
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第93条
理事会は、各理事が招集する。ただし、理事会を招集する理事を定款又は理事会で定めたときは、その理事が招集する。
2 前項ただし書に規定する場合には、同項ただし書の規定により定められた理事(以下この項及び第百一条第二項において「招集権者」という。)以外の理事は、招集権者に対し、理事会の目的である事項を示して、理事会の招集を請求することができる。
3 前項の規定による請求があった日から五日以内に、その請求があった日から二週間以内の日を理事会の日とする理事会の招集の通知が発せられない場合には、その請求をした理事は、理事会を招集することができる。
また監事にも同様に、一定の場合に理事会を招集できることとされています(一般法人法101条3項,197条)
招集通知の時期
理事会を招集する者は、理事会の日の1週間前までに各理事および各監事に対して通知を発しなければなりません(一般法人法94条1項)。あくまでも通知を発すればよく、通知が届く日ではないことに留意が必要です。
この規定は理事や監事が理事会に出席する機会を確保するために一定の期間を設けることが趣旨ですが、定款で定めた場合には、1週間よりも短い期間に短縮することが可能です。この期間の短縮は、定款で行わなければならず、理事会決議や理事会の運営規程で短縮はできないことに留意が必要です。
招集通知の方法
招集通知の方法は、一般法人法では特に規定がされていません。したがって、書面はもちろんのこと、メールなどの電磁的方法や口頭でおこなっても違法にはなりません。ただし、実務上の対応として、後日通知を送った送らないの議論になり招集手続きの瑕疵を指摘されることがないように、書面やメールなどの電磁的方法によって履歴が残る形で招集通知を行うのが一般的です。
招集手続きの省略
招集手続きは、理事と監事が理事会に出席する機会を確保するために定められていますが、理事と監事の全員の同意があれば、招集手続きを省略することができます(一般法人法94条2項)。なお個々の理事会ごとに、かつ、理事会開催前に、同意を得る必要があります。
こちらも招集通知の方法と同様に、具体的な同意の方法は、一般法人法では特に規定がされていません。そのため理論上は、電話やFAXなどの方法によっても同意を得ることは可能です。ただし、こちらも後日同意があったかどうかのトラブルを避けるためには、同意を得たことの証跡が残る形での運用が望ましいでしょう。
理事会の決議方法
理事会の決議
理事会の決議は、議決に加わることができる理事の過半数が出席し(充足数要件)、その過半数をもって行います(可決要件)。なお決議について特別の利害関係を有する理事は議決に加わることができません。この充足数要件と可決要件は、定款によってより厳しくすることが可能ですが、緩和することは認められません。
また法令上は、理事会の一つ一つの決議時点でこの充足数要件と可決要件を満たしておく必要がありますので、理事会を途中退席する予定の理事がいる場合には、充足数要件と可決要件を適法にクリアできるかは留意する必要があります。
なお理事は、自ら理事会に出席し、議決権を行使することが求められているため、代理出席や書面による議決権行使をすることはできません。
決議の省略
実務上は、書面決議やみなし決議といったりしますが、一般法人法では、リアルに理事会を開催せずとも、理事全員の同意があり、かつ、監事が異議を述べなければ、理事会決議があったものとみなすことが認められています(一般法人法96条)。理事全員が一同に会して理事会を開催することができない場合や、重要性の観点からわざわざ集まって議論する必要がない場合などに活用されることが多いです。なお理事からの同意の意思表示としては、書面またはメールなどの電磁的方法で行う必要があります。口頭による同意は認められません。
また決議の省略による場合には、定款にあらかじめその旨を定めておく必要がありますので、留意が必要です。
議事録の作成
通常開催の場合
理事会の議事録には、次の法定記載事項を記載します(一般法人法施行規則15条3項)
- 日時および場所
- 議事の経過の要領およびその結果
- 出席理事
- 出席監事
- 議長名
理事会の議事録には、出席した理事および監事の署名または記名押印が必要です。ただし定款に定めることで、出席した代表理事および監事が署名または記名押印とすることもできます。
議事録作成の効率化という意味では、出席理事全員から署名などをもうらのは大変なので、後者の取り扱いによることが一般的かと思われます。ただしこちらも理事会決議の省略と同様に、定款にあらかじめその旨を定めておく必要がありますので、留意が必要です。
決議の省略をした場合
理事会決議の省略をした場合であっても議事録の作成は必要です。記載事項は以下のとおりです(一般法人法施行規則15条4項)
- 理事会の決議があったものとみなされた事項の内容
- 上記提案をした理事の氏名
- 理事会の決議があったものとみなされた日
- 議事録の作成に係る職務を行った理事の氏名
上記1について、現実に理事会が開催されたものではないので、議事の経過要領や結果の記載は求められておりません。なお決議があったとみなされた事項に対して、理事全員の同意があったことと監事の異議がなかったことを示す書面を残す必要があります。
上記2について、通常は代表理事が提案者になることが一般的かと思われます。
上記3について、決議があったものとみなされる日は、具体的には議決に加わることのできる理事全員の同意が法人に到達し日です。
上記4について、理事会の決議を省略した場合には、出席理事等の署名または記名押印は必要ありません。そのかわり、その議事録を作成した理事の氏名の記載が求められております。通常は代表理事の名前で作成されることが一般的かと思われます。
おわりに
法人運営をスムーズに行うためには、効率的な理事会運営が重要です。理事会決議の方法として、定款に定めることで決議の省略といった方法もあるので、うまく活用して迅速な意思決定を図りたいところです。