【公益認定法改正】今から準備すべきことは!?外部理事・監事の設置について解説!!

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2025年4月から施行予定の新しい公益認定法について、大きな柱は以下の3つです。

  • 財務規律の柔軟化・明確化
  • 行政手続の簡素化・合理化
  • 自律的ガバナンスの充実・透明性向上

今回はこのうち「自律的ガバナンスの充実・透明性向上」について外部理事・外部監事の設置について解説いたします。なお本記事は、2024年7月5日に内閣府が公表している「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議 第2回FU会合事務局説明資料③」(以下、内閣府資料)に基づき解説しています。なお執筆時点では詳細がまだ決まっていないところがありますので、今後の動向次第で記事の内容に変更がある可能性があることはご了承ください。情報が公開され次第、内容は順次更新してまいります。

下記の記事では、改正内容の概論としてまとめておりますので、よければ参考にしてください。
【公益認定法改正】令和7年4月施行予定!! 実務担当者として知っておきたい改正内容の全貌!!

【略称】
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律・・・一般法人法
公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律・・・公益認定法(2025年4月1日施行のものを新公益認定法と表記しています)

外部理事の設置

外部理事の定義

新制度では、法人運営が内輪の者だけで行われることによる法人の私物化の防止、社会課題を踏まえた柔軟な視点から理事会運営の活性化を期待するべく、理事のうち外部理事を1人以上設置することが求められます(新公益認定法第5条1項15号)

外部理事は、法令では以下の通り規定されています。

理事のうち一人以上が、当該法人又はその子法人(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号。以下「一般社団・財団法人法」という。)第二条第四号に規定する子法人をいう。以下この号及び次号において同じ。)の業務執行理事(一般社団・財団法人法第百十五条第一項(一般社団・財団法人法第百九十八条において準用する場合を含む。)に規定する業務執行理事をいう。以下この号において同じ。)又は使用人でなく、かつ、その就任の前十年間当該法人又はその子法人の業務執行理事又は使用人であったことがない者その他これに準ずるものとして内閣府令で定める者であること。ただし、毎事業年度における当該法人の収益の額、費用及び損失の額その他の政令で定める勘定の額がいずれも政令で定める基準に達しない場合は、この限りでない。

公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律第5条1項15号

要約すると下記のものが外部理事の定義です。

  1. 下記の要件を満たすもの
    • 当該法人又はその子法人の業務執行理事ではない
    • その就任の前10年間当該法人又はその子法人の業務執行理事又は使用人であったことがない
  2. 上記1.に準ずるものとして内閣府令で定めるもの

外部理事になれない者

執筆時点ではまだ確定ではありませんが、内閣府令において以下のものは外部理事になれないとして定められる予定です。

  • 現に公益社団法人の社員である者
  • 公益財団法人の設立者

公益社団法人の「社員」とは雇用関係のある社員とは異なり、社員総会において議決権を行使する社員のことを指します。
社員は、法⼈の構成員であり、最⾼議決機関である社員総会の構成員であることから法⼈の外部とはいえないため、外部理事に該当しません。

公益財団法人の設立者は財産設立の意思をもって財産を拠出する者であり、法人の外部とはいえないため、外部理事に該当しません。

外部理事を設置しなくてもいい小規模法人とは

上記のとおり、改正後においては外部理事を最低1名は設置する必要がありますが、事業規模の小さい法人については、外部理事を確保することが困難であること等に鑑みて、小規模法人に該当する場合には、外部理事を設置しなくてもよいことになります。

具体的には、以下の要件を満たす法人が小規模法人であり、外部理事設置の適用除外になります。

  • 収益が3,000万円未満で、かつ、費用・損失が3,000万円未満であること

このような法人については、一般的には常勤の職員が少なく、事務体制が脆弱である可能性があることから、外部理事を確保することが困難なことが予想されます。したがって事務負担等への配慮から適用除外として取り扱われる予定です。

外部監事の設置

外部監事の定義

監事についても、理事同様に外部監事の設置が義務付けられます(新公益認定法第5条1項16号)
外部監事は、法令では以下の通り規定されています。

監事(監事が二人以上ある場合にあっては、監事のうち一人以上)が、その就任の前十年間当該法人又はその子法人の理事又は使用人であったことがない者その他これに準ずるものとして内閣府令で定める者であること。

公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律第5条1項16号

要約すると下記のものが外部監事の定義です。

  1. その就任の前10年間当該法人又はその子法人の業務執行理事又は使用人であったことがないもの
  2. その他これに準ずるものとして内閣府令で定める者であるもの

外部監事になれない者

こちらも外部理事同様に、外部監事になれない者を定めており内容は外部理事と同様です。

外部監事には小規模法人の適用除外がない

外部理事には小規模法人の適用除外がありましたが、実は外部監事には適用除外の規定がありません。したがって、小規模法人であっても外部監事の設置が必要になる予定です。

あらためて両者の法令を並べてみると、外部理事の方で小規模法人の適用除外が規定されているただし書きの箇所(黄色ハイライト)が外部理事の法令には存在していません。このことから小規模法人の適用除外は外部理事のみに規定されているのであって外部監事にはなく、小規模法人であっても外部監事の設置が必要ということになります。

外部理事
(公益認定法5条1項15号)
外部監事
(公益認定法5条1項16号)
理事のうち一人以上が、当該法人又はその子法人(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号。以下「一般社団・財団法人法」という。)第二条第四号に規定する子法人をいう。以下この号及び次号において同じ。)の業務執行理事(一般社団・財団法人法第百十五条第一項(一般社団・財団法人法第百九十八条において準用する場合を含む。)に規定する業務執行理事をいう。以下この号において同じ。)又は使用人でなく、かつ、その就任の前十年間当該法人又はその子法人の業務執行理事又は使用人であったことがない者その他これに準ずるものとして内閣府令で定める者であること。ただし、毎事業年度における当該法人の収益の額、費用及び損失の額その他の政令で定める勘定の額がいずれも政令で定める基準に達しない場合は、この限りでない。監事(監事が二人以上ある場合にあっては、監事のうち一人以上)が、その就任の前十年間当該法人又はその子法人の理事又は使用人であったことがない者その他これに準ずるものとして内閣府令で定める者であること。※筆者注:ただし書きがない

外部理事・外部監事の設置期限

新制度で導入される外部理事・外部監事について説明してまいりましたが、では具体的にいつまでに設置すればよいのでしょうか。

新公益認定法は2025年4月1日から施行予定ですが、同法の附則第5条(令和六年五月二二日法律第二九号)において外部理事・外部監事の経過措置が設けられています。

経過措置の内容としては、新法の施行日において在任するすべての理事・監事の任期が満了する日の翌日から適用するとあります。

具体的には、例えば理事の任期が2年で3月決算の法人の場合、2024年5月の社員総会・評議員会で就任された理事がいるときは、その理事の任期満了は2026年5月○日となります。その翌日から新法の適用を受けるため、2026年5月の社員総会・評議員会で外部理事が就任していればよいということになります。

参考までに根拠法令の内容は以下のとおりです。

(公益認定の基準に関する経過措置の特例)
第五条
(筆者注:1項省略)
2この法律の施行の際現に存する公益法人又は施行日以後に前条の規定によりなお従前の例によることとされる旧法第五条の基準に基づいて公益認定を受けた公益法人については、新法第五条(第十五号に係る部分に限る。)の規定は、この法律の施行又は当該公益認定の際現に在任する当該公益法人の全ての理事の任期が満了する日の翌日(その日前に当該公益法人が同号の基準に適合した場合にあっては、その適合した日)から適用する。
3この法律の施行の際現に存する公益法人又は施行日以後に前条の規定によりなお従前の例によることとされる旧法第五条の基準に基づいて公益認定を受けた公益法人については、新法第五条(第十六号に係る部分に限る。)の規定は、この法律の施行又は当該公益認定の際現に在任する当該公益法人の全ての監事の任期が満了する日の翌日(その日前に当該公益法人が同号の基準に適合した場合にあっては、その適合した日)から適用する。

公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律 附則第5条(令和六年五月二二日法律第二九号)

今から準備しておくべきこと

これまで見てきたとおり新たに外部理事・外部監事の設置が義務付けられることになり、経過措置があるとはいえ、早めに対策を打っておくことが肝心です。

特に外部理事の要件として、社団法人における「社員」が含まれないことから、公益社団法人の方は、ここの要件にひっかかりやすいのではないかと推測します。

理由は、例えば同業者団体などでは会員企業である社員の中から、理事を持ち回りで選任していることが多いと考えられるためです。そのような団体は、外部から理事を最低1人つれてくる必要があります。直前でバタバタしないように早いうちから候補者を探しておくのが望ましいでしょう。

また外部監事は、公益社団法人・公益財団法のどちらも設置義務がありますので、こちらの人選もいまのうちから検討しておく必要があるでしょう。

さらに外部理事・外部監事を招き入れる上で、役員である以上は一定程度の責任を負うことになりますので、無報酬ではなかなか引き受け手が見つからないのではないかと推測します。報酬を出すとしても、法人の定款によっては、理事・監事が無報酬と定められているところも少なくありませんので、そのような団体は定款の見直しも必要になるかと思います。

人選から定款の見直し等、内部の意思決定の期間も含めると時間はそこまで多く残されているわけではありません。いまのうちから準備しておくことが肝心です。