【相続税】専門知識がなくても自分で申告できる?相続税申告の基本を解説

家族が亡くなり相続が発生したとき、「相続税の申告が必要なのか」「税理士に頼まず自分で申告することはできるのか」と悩まれる方も多いのではないでしょうか。
相続税は、相続が発生したからといって必ず申告しなければならないものではありません。
一方で、土地や非上場株式などがある場合や、各種特例を利用する場合には、財産評価や適用要件について専門的な判断が必要になることがあります。
今回は、相続税の基本的な仕組みから、専門知識がなくても自分で申告できるのかについて解説します。
目次
相続税とは
相続税とは、亡くなった方から相続や遺贈などによって財産を取得した場合に、その財産の金額が一定額を超えると課税される税金です。
亡くなった方を「被相続人」、その財産を相続する方を「相続人」といいます。
相続税の対象となる財産としては、例えば以下のようなものがあります。
- 現金・預貯金
- 土地・建物
- 株式・投資信託などの有価証券
- 自動車
- 貴金属など
- 一定の生命保険金・死亡退職金
- 相続開始前の一定期間内の暦年課税による贈与財産など
一方、被相続人の借入金などの債務や一定の葬式費用については、遺産の額から差し引くことができます。
このように財産や債務などを整理したうえで、正味の遺産額が一定額を超えるかどうかを確認することになります。
相続税には基礎控除がある
相続税がかかるかどうかを判断するうえで、まず押さえておきたいのが「基礎控除」です。
基礎控除額は以下の算式で計算します。
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
例えば、法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人の場合には、
3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
が基礎控除額になります。
正味の遺産額が基礎控除額を超える場合には、原則として相続税の申告が必要になります。
したがって相続が発生した場合には、いきなり相続税額を計算するというよりも、まずは、
- どのような財産があるのか
- それぞれの財産はいくらなのか
- 借入金などの債務はいくらあるのか
- 法定相続人は何人なのか
といった情報を整理することが重要です。
相続税の申告期限は10か月
相続税の申告と納税には期限があります。
原則として、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に申告・納税を行う必要があります。
10か月と聞くと、それなりに時間があるように感じるかもしれません。
しかし実際には、
- 戸籍などを集めて相続人を確認する
- 預貯金や不動産などの財産を調査する
- 財産を評価する
- 相続人同士で遺産分割について話し合う
- 相続税を計算する
- 申告書や必要書類を準備する
といった作業が必要になります。
特に遺産分割に時間がかかる場合には、10か月はそれほど長い期間ではありません。
そのため、相続税の申告が必要になりそうな場合には、早い段階から準備を始めておくことが大切です。
専門知識がなくても自分で申告できるのか
結論として、相続税の申告を必ず税理士に依頼しなければならないという決まりはありません。
そのため、相続人自身で申告書を作成して提出することも可能です。
国税庁でも「相続税の申告のしかた」やチェックシート、相続税の申告要否を確認するためのツールなどを公開しています。
ただし、自分で申告できることと、自分で簡単に申告できることは別の話です。
相続税では、財産の種類や相続人の状況によって申告の難易度が大きく変わります。
比較的、自分で申告しやすいケース
例えば、次のような場合には比較的整理しやすいと思われます。
- 相続人が少ない
- 相続人同士で争いがない
- 財産の大部分が預貯金である
- 不動産が少ない
- 非上場株式など評価の難しい財産がない
- 生前贈与がほとんどない
- 複雑な特例を利用しない
例えば、相続財産のほとんどが預貯金で、誰がどの財産を相続するかも決まっているケースであれば、自分で申告できる可能性は比較的高いでしょう。
一方で、財産の種類が増えるにつれて確認すべき事項も増えていきます。
自分での申告が難しくなりやすいケース
土地を相続した場合
相続税では、土地について単純に購入価格や固定資産税評価額をそのまま使うわけではありません。
土地の場所や形状、道路との接し方、利用状況などによって評価額が変わる場合があります。
そのため、不動産が多い相続では、財産評価の難易度が高くなる傾向があります。
非上場株式がある場合
家族経営の会社など、上場していない会社の株式を相続する場合には、その株式の評価が必要になります。
預貯金のように残高を確認すれば金額が分かるものではなく、会社の規模や財務内容などをもとに評価することになるため、専門性が高くなります。
生前贈与がある場合
被相続人から生前に贈与を受けている場合には、その贈与について相続税の計算に加算する必要があるか確認しなければなりません。
生前贈与については近年制度改正も行われており、贈与した時期や利用した制度によって取り扱いが異なります。
贈与の履歴がある場合には、贈与契約書や過去の贈与税申告書なども確認しておくとよいでしょう。
特例を利用する場合
相続税には、一定の要件を満たすことで税負担を軽減できる制度があります。
代表的なものとして、
- 配偶者の税額軽減
- 小規模宅地等の特例
などがあります。
これらの制度は相続税額を大きく減らせる場合がありますが、それぞれ適用要件があります。
また、特例を利用した結果として相続税額が0円になる場合でも、相続税の申告自体が必要になることがあります。
「税金がかからないから申告も必要ない」と判断しないように注意が必要です。
遺産分割が終わっていない場合にも注意
相続税の申告期限までに遺産分割が終わっていなかったとしても、原則として申告期限が延びるわけではありません。
また、未分割の財産については、当初の申告時点では配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用できない場合があります。
一定の書類を提出し、その後期限内に遺産分割が成立した場合には、後から特例を適用できるケースもあります。
遺産分割に時間がかかりそうな場合には、早めに税務署や税理士へ確認しておいた方がよいでしょう。
自分で申告する場合に注意したいこと
自分で相続税申告を行う場合、特に注意したいのが「財産の漏れ」と「財産評価」です。
預貯金や自宅のほかにも、証券口座、生命保険、貸付金など、相続税の計算に含める必要がある財産がないか確認する必要があります。
相続財産の把握に漏れがあると、その後の計算が正しくても、正確な申告にはなりません。
また、土地や非上場株式などについては、相続税独自の評価方法があります。
自分で申告する場合には、まずすべての財産を洗い出し、それぞれどのように評価するのかを一つずつ確認することが重要です。
相続税申告はe-Taxでも可能
相続税の申告は、e-Taxを利用して電子申告することもできます。
ただし、所得税の確定申告で利用されている「確定申告書等作成コーナー」では、相続税申告書を作成することはできません。
相続税の場合にはe-Taxソフトや対応する税務会計ソフトなどを利用します。
また、e-Taxソフトが相続税額を自動的に計算してくれるわけではないため、事前に相続税の計算そのものを行う必要があります。
おわりに
相続税は、相続が発生したすべての方にかかる税金ではありません。
まずは相続財産や債務、相続人を整理し、相続税の申告が必要になりそうかを確認するところから始めることになります。
相続税申告を自分で行うこと自体は可能ですが、土地や非上場株式がある場合、生前贈与がある場合、各種特例を利用する場合などは、専門的な判断が必要になることもあります。
そのため、最初から「全部自分でやる」「全部税理士に任せる」と決めてしまう必要はありません。
まずは財産の全体像を整理し、自分で判断することが難しい部分があるかを確認したうえで、必要に応じて専門家へ相談するという進め方がよいでしょう。
申告期限の直前になって慌てることがないよう、相続が発生したら早めに財産や相続人の状況を整理しておくことが大切です。
清塚樹税理士事務所では、相続税の申告手続きを承りますのでお気軽にご相談くださいませ。
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