公益法人の役員賞与と事前確定届出給与|届出期限・社会保険料・源泉徴収の実務上の注意点

公益社団法人や公益財団法人において、理事などの役員に賞与を支給する場合、税務上の取扱いには注意が必要です。
従業員に対する賞与とは異なり、役員に支給する賞与は、原則として「事前確定届出給与」の要件を満たさなければ、法人税の計算上、損金に算入できません。
特に公益法人では、社員総会や評議員会の開催時期、役員の職務執行期間、報酬規程に基づく支給時期の関係を整理しておくことが重要です。
今回は、公益法人の常勤役員に対する役員賞与について、事前確定届出給与の基本的な取扱いから、社会保険料・源泉徴収の実務まで解説します。
目次
事前確定届出給与とは
法人税法上、役員に支給する給与は、原則として、次のいずれかに該当する場合に損金算入が認められます。
- 定期同額給与
- 事前確定届出給与
- 一定の業績連動給与
このうち、事前確定届出給与とは、役員の職務について、あらかじめ決められた時期に、確定した金額を支給する給与をいいます。
例えば、常勤理事に対して毎月30万円の役員報酬とは別に、6月と12月にそれぞれ50万円の賞与を支給する場合などが該当します。
事前確定届出給与として損金算入するためには、原則として所定の期限までに税務署へ届出を行い、届け出た支給日・支給金額どおりに支給する必要があります。
なお、届出が不要となる例外もあります。例えば、同族会社に該当しない法人が、定期給与を支給していない役員に金銭による給与を支給する場合です。公益法人においても、非常勤役員に年1回だけ報酬を支給するような場合には、この届出不要の規定が適用できます。
公益法人では社員総会・評議員会と職務執行期間の関係に注意
事前確定届出給与を検討するうえで重要なのが、「役員の職務執行期間」という考え方です。役員の職務執行期間は、必ずしも法人の事業年度と一致するわけではありません。一般に、定時社員総会や定時評議員会の開催日から次の定時総会等までの期間が、一つの職務執行期間となります。
例えば、次の公益財団法人を考えてみます。
【設例】
- 決算期:3月31日
- 定時評議員会:毎年6月25日
- 役員賞与:6月10日と12月10日に各50万円
- 役員報酬規程に支給時期と金額を規定
- 3月の理事会で翌年度予算を承認
この場合、6月10日に支給する賞与と12月10日に支給する賞与では、対応する職務執行期間が異なることになります。
6月10日の賞与は、その年の6月25日に開催される定時評議員会よりも前に支給するものです。そのため、通常は前回の定時評議員会から始まる職務執行期間に対応する賞与として整理します。
一方、12月10日の賞与は、その年の6月25日から開始する職務執行期間に対応するものと考えられます。
したがって、同じ事業年度に支給する賞与であっても、職務執行期間を基準にすると、別々の期間に属することになります。
事前確定届出給与は、単に事業年度ごとの支給総額を決めればよいのではなく、どの職務執行期間に対する給与なのかを整理することが重要です。
なお、公益法人の場合には、通常は役員報酬規程において役職ごとの金額や支給基準が具体的に定められているため、事前確定届出給与を支給する場合には、役員報酬規程との整合性の確認が必要です。
事前確定届出給与の届出期限
事前確定届出給与の届出期限は、原則として次のいずれか早い日です。
① 社員総会等で支給内容を決議した日(その日が職務執行開始日より後の場合は職務執行開始日)から1か月を経過する日
② 職務執行開始日の属する会計期間の開始日から4か月を経過する日
例えば、3月決算の公益法人で、6月25日の定時総会等において役員賞与の支給内容を決定し、同日から職務執行を開始する場合、原則的な届出期限は7月25日です。
ただし、総会等の決議日と実際の職務執行開始日が異なる場合には、別途確認が必要となります。
また、新設法人や臨時改定事由に該当する場合などには、届出期限の特例があります。
公益法人であっても事前確定届出給与の検討は必要?
公益社団法人・公益財団法人は、法人税法上、公益目的事業については原則として法人税が課税されません。
一方、法人税法上の収益事業については法人税の課税対象となります。
したがって、役員賞与が公益目的事業や法人会計のみに対応するものであり、収益事業の所得計算に影響しない場合には、届出の有無による法人税額への直接的な影響は生じませんが、役員が収益事業にも従事しており、その賞与の一部を収益事業の経費として配賦する場合には、事前確定届出給与の要件を満たしているかが重要になります。
また、公益認定法上、理事・監事・評議員の報酬等については、不当に高額とならないよう支給基準を定め、その基準に従って支給する必要があります。法人税法上の損金算入要件と、公益認定法上の役員報酬に関する規制は、それぞれ別の観点から確認する必要があります。
役員賞与に社会保険料はかかる?
役員に賞与を支給した場合には、社会保険料の取扱いについても確認が必要です。
健康保険・厚生年金保険の被保険者となっている常勤理事などに賞与を支給する場合、原則として賞与も社会保険料の対象となります。
例えば、常勤理事に50万円の賞与を支給した場合、その賞与についても健康保険料・厚生年金保険料が計算され、本人負担分を控除して支給することになります。
社会保険料は、原則として税引前の賞与総額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に保険料率を乗じて計算します。
なお、標準賞与額には上限が設けられており、健康保険と厚生年金保険で上限額や集計期間が異なります。
また、賞与を支給した場合には、原則として支給日から5日以内に「被保険者賞与支払届」を提出する必要があります。
なお、法人の役員は、原則として労働保険上の労働者には該当しないため、通常の役員報酬・賞与は雇用保険料の対象になりません。
役員賞与の源泉所得税はどう計算する?
役員に支給する賞与は、所得税法上、原則として給与所得に該当します。そのため、賞与の支給時に所得税等を源泉徴収する必要があります。
通常の賞与については、国税庁が公表する「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使用して計算します。
基本的な計算手順は次のとおりです。
① 前月の給与から社会保険料等を控除する
② 扶養親族等の人数と①の金額に応じて、賞与に適用する税率を確認する
③ 賞与の総額から社会保険料等を控除した金額に、②の税率を乗じる
例えば、役員賞与が50万円で、社会保険料の本人負担額が7万円であれば、原則として43万円に所定の税率を乗じて源泉所得税額を計算します。
ただし、前月に給与の支給がない場合や、賞与が前月給与の10倍を超える場合には、通常の算出率表による計算とは異なる方法を使用します。
なお法人税法上、事前確定届出給与の届出を行っていないため損金不算入となる役員賞与であっても、受給者側では原則として給与所得となるため、源泉所得税は徴収する必要があります。
実務上のチェックポイント
公益法人で役員賞与を支給する際には、次の事項を確認しておきましょう。
- 役員報酬規程に賞与の支給基準・支給時期が定められているか
- 定款や法令に従った機関決定が行われているか
- 賞与がどの職務執行期間に対応しているか
- 事前確定届出給与の届出が必要か
- 届出期限までに税務署へ提出しているか
- 届出内容どおりの時期・金額で支給しているか
- 社会保険の被保険者に該当するか
- 賞与支払届の提出が必要か
- 源泉所得税を適切に計算しているか
- 収益事業への費用配賦が適切か
まとめ
公益社団法人・公益財団法人の役員賞与については、法人税法上の事前確定届出給与の取扱いに加えて、公益認定法、社会保険、源泉所得税など、複数の制度を踏まえた対応が必要となります。
特に注意したいのが、事業年度と役員の職務執行期間が必ずしも一致しない点です。
同じ事業年度内に支給する賞与であっても、対応する職務執行期間が異なる場合には、それぞれの期間について、支給内容の決定や届出の要否を確認する必要があります。
また、事前確定届出給与に該当するかどうかにかかわらず、社会保険料や源泉所得税については別途適切に処理しなければなりません。
公益法人の役員報酬については、報酬規程の整備だけでなく、実際の支給時期や税務・労務上の手続きまで一体として管理することが重要です。


