公益法人が「税額控除対象法人」になるには?要件と申請手続きをわかりやすく解説

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公益社団法人や公益財団法人に対して個人が寄附をした場合、その寄附者は原則として「寄附金控除(所得控除)」を受けることができます。

さらに、その公益法人が一定の要件を満たし、行政庁から「税額控除対象法人」である旨の証明を受けている場合には、寄附者は所得控除に代えて「税額控除」を選択することができます。

税額控除は、原則として次の算式により計算します。

(寄附金額-2,000円)×40%

この金額を所得税額から直接控除することができるため、所得がそこまで高くない寄付者にとっては、所得控除と比べて有利になるケースも多く、公益法人にとっても寄附を集めるうえで重要な制度です。

今回は、公益社団法人・公益財団法人が税額控除対象法人となるための要件と、内閣府等への申請手続について解説します。

公益法人なら自動的に税額控除の対象になるわけではない

公益社団法人・公益財団法人に対する寄附金は、「特定公益増進法人に対する寄附金」として所得控除の対象となります。

一方、税額控除については、公益法人であれば自動的に適用されるわけではありません。

税額控除の対象となるためには、公益法人が一定の寄附実績等に関する要件を満たし、公益認定を受けた行政庁から「税額控除対象法人」であることの証明を受ける必要があります。

内閣府が行政庁となっている公益法人については内閣府へ、都道府県が行政庁となっている公益法人については各都道府県へ申請します。

税額控除対象法人になるための要件

税額控除対象法人になるためには、原則として、一定の実績判定期間について、次のいずれかの要件を満たす必要があります。

絶対値要件

3,000円以上の寄附をした者が、平均して年100人以上いること。

相対値要件

経常収入金額に占める寄附金等収入の割合が20%以上であること。

この2つの要件を両方満たす必要はありません。どちらか一方の要件を満たしていれば、税額控除に係る証明申請を行うことができます。
実務上は、毎年ある程度多くの寄附者がいる法人では絶対値要件、寄附者数はそれほど多くないものの比較的大きな寄附を受けている法人では相対値要件を検討することになります。

絶対値要件

「年平均100人以上」とは

絶対値要件では、実績判定期間に「3,000円以上の寄附金を支出した者が、平均して年100人以上いること」が求められます。

例えば、実績判定期間が5年間の場合、単純に考えると5年間で合計500人以上の寄附者がいることが一つの目安となります。ただし、毎年度必ず100人以上でなければならないわけではなく、平均して年100人以上いればよいことになります。

例えば、各年度の寄附者数が次のような場合には、5年間の合計は500人となり、年平均では100人となるため、要件を満たします。

1年目 90人
2年目 110人
3年目 120人
4年目 80人
5年目 100人
合計 500人

また、1回の寄附金額が3,000円未満であっても、同一事業年度中の同一人物からの寄附金額を合計して3,000円以上となる場合には、原則として寄附者1人として判定することができます。

小規模な公益法人には「100人要件」の緩和措置がある

公益法人の中には、事業規模がそれほど大きくなく、年間100人もの寄附者を集めることが難しい法人もあります。そこで、一定の小規模法人については、絶対値要件の判定にあたって寄附者数を補正する仕組みが設けられています。

実績判定期間中に、公益目的事業費用が1億円未満となる事業年度がある場合には、当該事業年度の判定基準である寄附者数を次のような計算によって補正することができます。

実際の寄附者数 × 1億円 ÷ 公益目的事業費用の額(*1)
(*1) 公益目的事業費用の額が、1,000万円未満の場合には、1,000万円とします。

例えば、公益目的事業費用が5,000万円で、3,000円以上の寄附者が60人だった場合には、

60人 × 1億円 ÷ 5,000万円 = 120人となります。

実際の寄附者数は60人ですが、税額控除要件の判定上は120人として計算することができるということです。公益目的事業費用が1億円未満の公益法人にとっては、非常に重要な特例です。

ただし、この緩和措置を利用する場合には、実績判定期間における寄附金額が、年平均30万円以上であることが必要です。

したがって、小規模法人については、

「上記算式による補正後の寄附者数が年平均100人以上」

かつ

「寄附金額が年平均30万円以上」

となっているかを確認する必要があります。

寄附者のカウント方法について要注意

絶対値要件を判定するときには、寄附者のカウント方法が最も重要となります。単純に寄附をした人の数を数えればよいわけではありません。

理事・監事からの寄附はカウントしない(ただし評議員はカウントOK)

寄附者の範囲について、一定のルールが設けられており、法人の役員である理事と監事は、原則として寄附者数にカウントすることができません。一方、公益財団法人の評議員については、役員ではないため寄附者としてカウントすることができます。

親族単位で1人としてカウントする

また、寄附者本人と生計を一にする親族等については、それぞれ別々に寄附を行っていたとしても、まとめて1人として判定します。例えば以下のようなケースが考えられます。

例1:ある事業年度において、2,000円の寄附金を支出した者と生計を一にする配偶者・親子から1,000円の寄附があった場合には、これらを合算し「1人から3,000円」の寄附としてカウントします。

例2:ある事業年度において、5,000円の寄附金を支出した者と生計を一にする配偶者・親子から3,000円の寄附があった場合には、いずれか一方の者のみを寄附者としてカウントします(もう一方の者は100人にカウントすることはできません)。

法人からの寄附は、1法人を1人としてカウントする

法人からの寄附については、1法人を1人としてカウントすることができます。

賛助会費などは対価性・義務性がないものついて寄附金としてカウントする

賛助会費などについては、名称だけで判断するのではなく、その支払いに対価性や義務性がない場合には、実質的に寄附金に該当するものとして税額控除要件の判定対象に含めて良い場合があります。

将来的に税額控除対象法人への申請を検討している公益法人では、普段から、

・寄附者の氏名
・寄附者の住所
・寄附年月日
・寄附金額

などを適切に管理しておくことが重要です。

相対値要件

「寄附金等収入が20%以上」

もう一つの判定方法が、相対値要件です。

相対値要件では、実績判定期間について、おおむね次の割合が20%以上となることが求められます。

寄附金等収入金額 ÷ 経常収入金額 ≧ 20%

ただし、会計上の数字をそのまま使って計算すればよいわけではありません。

税額控除制度の独自のルールに従って、「寄附金等収入金額」と「経常収入金額」にそれぞれ一定の調整を行う必要があります。

収入金額の調整計算

例えば、一人の寄附者から非常に多額の寄附を受けている場合には、その寄附金額の全額を分子に算入できるわけではありません。特定の寄附者に過度に依存している場合を除外する趣旨から、以下の算式で計算した「一者当たりの基準限度超過額」を「寄附金等収入金額」から控除します。

実績判定期間の同一の者からの寄附金の合計額 ー ( 実績判定期間の寄附金の合計額 × 10% )

また、氏名等が明らかでない寄附金や、1,000円未満の少額寄附などについても、「寄附金等収入金額」から控除します。

公益社団法人については、法人法上の社員から支出された会費は、公益目的事業費率(経常費用に占める公益目的事業費の割合)の分だけ「寄附金等収入金額」に加算します。ただし加算できる金額は上限があり、社員の数が20人未満の場合には、会費を加算することができません。

その他国等からの補助金等についても一定の調整計算が必要になります。

これらをまとめると以下のとおりです。

調整する収入項目控除するもの加算するもの
寄附金等収入金額(分子)・1者当たりの基準限度超過額
・1者からの1,000円未満の少額寄附金
・氏名等が不明の寄附金
・社団の社員からの支出された会費×公益目的事業比率
・国等からの補助金の額
経常収入金額(分母)・国等からの補助金、委託による支出
・資産売却収入で臨時的なもの
なし

相対値要件については計算が比較的複雑であるため、内閣府が用意しているチェック表を使用して判定するのが実務上わかりやすいでしょう。

実績判定期間は原則として直近5年間

絶対値要件、相対値要件のいずれについても、「実績判定期間」における実績を基に判定します。

実績判定期間は、原則として直前に終了した事業年度までの5年間です。

例えば、3月決算の公益法人で、2026年6月に申請する場合には、原則として2026年3月期までの直近5事業年度について判定することになります。

ただし、法人設立から5年を経過していない場合には、法人設立の日から直前事業年度終了日までが実績判定期間となります。

また、公益認定を受ける前に一般社団法人や一般財団法人として活動していた期間についても、実績判定期間に含まれます。

内閣府への申請手続

内閣府が行政庁となっている公益法人については、公益法人Informationを通じて、

「税額控除に係る証明申請」

を行います。

申請までの大まかな流れは、次のとおりです。

① 絶対値要件・相対値要件のどちらを使用するか確認する

② 寄附者や寄附金額のデータを整理する

③ 必要なチェック表等を作成する

④ 公益法人Informationから証明申請を行う

⑤ 内閣府による審査を受ける

⑥ 税額控除に係る証明書の交付を受ける

申請前に、まず自法人がどちらの要件を満たしているのかを試算しておくことが重要です。

申請時に準備する主な書類

申請時には、使用する要件に応じて必要な書類を準備します。

主な書類としては、次のようなものがあります。

  • 税額控除に係る証明申請書
  • 寄附金受入明細書
  • 絶対値要件に関するチェック表
  • 相対値要件に関するチェック表
  • 計算書類やその内訳書など、判定の根拠となる資料

寄附金受入明細書には、寄附金の受領年月日、寄附者の氏名、住所、寄附金額などを記載します。

また、小規模法人の緩和措置を利用する場合には、公益目的事業費用の金額を確認するための資料も必要になります。

税額控除対象法人への申請を検討している場合には、申請直前になって過去5年間の寄附者情報を集めるのではなく、日頃から寄附者名簿を整備しておくことが大切です。

申請するタイミングにも注意

税額控除の申請では、直前に終了した事業年度までの実績を使用します。

特に相対値要件を利用する場合には、直近事業年度の決算数値が必要になるため、決算が確定してから申請を行うことになります。

3月決算の公益法人であれば、通常は定時社員総会や定時評議員会を経て決算が確定し、事業報告等を行政庁へ提出した後に申請を行います。

税額控除の証明には有効期間がある

税額控除対象法人として認められると、行政庁から証明書が交付されます。

この証明書の有効期間は、原則として「証明を受けた日から5年間」です。事業年度単位ではないためご留意ください。

そのため、毎年証明申請を行う必要はありません。

ただし、証明書の有効期間が終了した後も引き続き税額控除対象法人として寄附を受けたい場合には、改めて要件を確認し、証明申請を行う必要があります。うっかり証明期間を過ぎたりしないように、有効期限を法人内部でしっかりと管理しておくことが重要です。

証明を受けた後の寄附者への対応

税額控除対象法人となった後は、寄附者が確定申告で税額控除を受けられるように以下の書類を交付します。

  • 寄附金の受領証明書
  • 税額控除対象法人であることを証する書類の写し

また寄附金の受領証明書には、以下の法定の記載事項があります。

  • 寄附者の氏名
  • 寄附者の住所
  • 寄附を受領した法人の名称
  • 寄附金の額
  • 寄附金を受領した旨
  • 寄附金を受領した年月日
  • その寄附金が、その法人の主たる目的である業務に関連する寄附金である旨

特に最後の一文が非常に重要です。一般的には以下のような一文があればよろしいでしょう。賛助会費を寄附金扱いとしている場合にも同様に記載が必要です。

上記の寄附金は、所得税法第78条第2項、租税特別措置法第41条の18の3及び法人税法第37条第4項に基づく寄附金に該当するものです。

税額控除の証明書を取得しただけでは、寄附者が自動的に税額控除を受けられるわけではありません。公益法人側でも、寄附者が確定申告を行えるよう、領収書や証明書の写しを適切に交付する必要があります。そのため、税額控除対象法人となった際には、寄附金の領収書の様式や、寄附者への案内文なども併せて見直しておくとよいでしょう。

まとめ

公益法人が税額控除対象法人となるためには、一定の寄附実績等に関する要件を満たし、行政庁から証明を受ける必要があります。

主な判定方法は、

「3,000円以上の寄附者が年平均100人以上」という絶対値要件

または、

「経常収入に占める寄附金等収入の割合が20%以上」という相対値要件

のいずれかです。

特に絶対値要件については、公益目的事業費用が1億円未満の小規模な公益法人について、事業規模に応じて寄附者数を補正することができる特例があります。そのため、「寄附者が年間100人もいないから税額控除対象法人にはなれない」と考えている法人でも、実際に計算してみると要件を満たすケースがあります。

税額控除対象法人となることは、個人の寄附者にとって税制上のメリットを大きくするだけでなく、公益法人にとっても寄附募集を進めるうえで大きなメリットがあります。今後、個人からの寄附を積極的に増やしていきたい公益法人では、一度、自法人が税額控除対象法人の要件を満たしているか確認してみるとよいでしょう。

清塚樹税理士事務所では、税額控除団体の申請も対応しておりますので、申請を検討されている団体様は、お気軽にご相談くださいませ。