【非営利型法人】定款に「公益法人」と書くだけでは要件を満たさない?国税庁の注意喚起を解説

一般社団法人・一般財団法人のうち、法人税法上の一定の要件を満たす法人は「非営利型法人」に該当し、収益事業から生じた所得に対してのみ法人税が課されます。
法人税法上の「非営利型法人」になるためには、公益的な活動を行っていることのみで非営利型法人になるわけではありません。定款の記載内容についても、法令の要件を満たす必要があります。
この点について、国税庁は令和8年10月21日付で、日本税理士会連合会に「非営利型法人の定款記載要件について(周知依頼)」を発出しました。
今回は、当該周知依頼を元に、残余財産の帰属先を定款に定める際の注意点を解説します。
なお今回の記事でとりあげる非営利型法人は、非営利性が徹底された法人(非営利徹底型)についての解説を行います。要検討の詳しい内容は、以前の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
目次
国税庁が注意を呼びかけた背景
一般社団法人・一般財団法人は、公益認定を受けなくても設立できます。そのため、税務上の非営利型法人への該当性について、税務署をはじめとする行政機関等による事前の確認は行われません。
したがって、設立者自ら(または税理士等)が非営利型法人の要件を正確に把握した上で、定款を作成し、設立することになります。
そのため、非営利型法人を想定して設立したとしても、定款の記載内容などが法令の要件を満たしていなければ、非営利型法人の要件を満たしていない可能性があります。
今回の周知依頼では、税理士に対して、一般社団法人等の設立・定款変更に関与する際には、定款の記載内容について、非営利型法人法人の要件への該当性について税務上の観点から適切に助言・周知することを目的に発出されています。
残余財産の帰属先には定款上の制限が必要
この周知依頼の中で、国税庁が非営利型法人の要件への該当性が問題となる記載例を参考資料として挙げています。それは残余財産の帰属先についてです。
残余財産とは、法人が解散し、債務の弁済などを行った後に残る財産をいいます。
非営利徹底型の要件の一つとして、解散時の残余財産の帰属先を、定款で法令に定められた者に決めておくことが求められています。
具体的には、法人税法施行令第3条第1項第2号により、次の帰属先が定められています。
- 国または地方公共団体
- 公益社団法人または公益財団法人
- 公益認定法第5条第20号イからトまでに掲げる法人
- 残余財産を公益信託の信託財産とする場合の、その公益信託の受託者
周知依頼では、帰属先を「公益法人」と定めた場合を問題例として取り上げています。
「公益法人」という記載では、なぜ問題になるのか
一般的には「公益法人」という言葉から、「公益社団法人・公益財団法人」を連想する方も多いと思います。
しかし「公益法人」という言葉は、世の中に法的な定義があるわけではありません。言ってみればただの通称にすぎないのです。
したがって、「公益活動を目的とする法人一般」という広い意味にも解釈できてしまうのです。その場合、法令で認められる帰属先に限定していることが明らかではありません。
設立者にとっては「公益法人=公益社団法人・公益財団法人」の意味合いで記載していたとしても、定款にそのように定義が書かれていない以上は、法令の要件を満たしていないということになってしまうのです。
そのため、参考資料では、残余財産の帰属先を無定義で「公益法人」と記載した場合には、非営利型法人の要件に該当しないと示されています。
当然「公益社団法人又は公益財団法人」と明記した場合は、法人税法施行令第3条第1項第2号イに該当すると整理されています。
| 帰属先の記載 | 今回の資料で示された取扱い |
|---|---|
| 公益法人(定義なし) | 帰属先の範囲が明確でなく、非営利徹底型の残余財産に関する要件を満たさない |
| 公益社団法人又は公益財団法人 | 同号イに定める帰属先に該当する |
「公益」という言葉が入っているかどうかではなく、帰属先の範囲が法令に沿って明確に定められているかがポイントです。
すでに設立している法人も定款の確認を
今回の周知を機に、すでに非営利型法人として税務処理をしている一般社団法人・一般財団法人も、現在の定款を確認しておきたいところです。
特に、次の点を確認しましょう。
- 残余財産の帰属先を、単に「公益法人」と記載していないか
- その用語の定義や、帰属先を限定する規定があるか
- 帰属先に、法令上認められない団体が含まれていないか
- 他の条項との関係でも、帰属先が明確になっているか
記載に問題が見つかった場合は、早急に必要な定款変更を行う必要があります。
非営利型法人のいずれの類型にも該当しない場合は、普通法人として、原則としてすべての所得が法人税の課税対象となりますので、かなりの影響があることが予想されます。
おわりに
今回の国税庁の周知では、残余財産の帰属先について、定款に単に「公益法人」と記載するだけでは、非営利徹底型の要件を満たさないことが示されました。法人の設立や定款変更の際は、定款の具体的な文言が税務上の要件に沿っているかを確認する必要があります。
清塚樹税理士事務所では、定款変更のご相談や、万が一誤りがあった場合の税務上の対応についてもご相談にのりますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。


